高分子合成化学研究室(旧青島研究室)

Osaka U 大阪大学 大学院理学研究科 高分子科学専攻

高分子合成化学研究室(旧青島研究室)

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研究の概要1

1. リビングカチオン重合による新しい性質や種々の形態を有する高分子の合成

カチオン重合は様々な重合系の中で最も古くから研究されている重合法の一つであり,利用可能なモノ マーの種類も多いなど多数の利点を有している。しかし,工業化されている材料は少なく,ブチルゴムや種々のオリゴマーなどに限ら れている。その大きな理由は,得られたポリマーの構造や分子量を制御することが困難だったからである。そこで我々は,カチオン重 合におけるリビング系の可能性を検討し,その有用性を明らかにしようとしてきた。その結果,元来活性ではあるが非常に不安定な生 長炭素カチオンの反応性を制御する方法を見いだし,生成する高分子の構造や分子量を制御することに成功した。リビングカチオン重 合に用いられる手法は,いくつかの種類があるが,以下では最近用いている添加塩基による重合系について紹介する。

ビニルエーテル類のカチオン重合をEtAlCl2等のハロゲン化金属を用い て行うと,通常は分子量分布の広いポリマーしか得られない。重合中に,移動反応などの様々な副反応が起こるためである。この系 に,弱いルイス塩基(添加塩基)として酢酸エチルや1,4-ジオキサン,テトラヒドロフラン(THF) 等の弱い塩基を添加すると,ルイス酸の活性が調節され,また生長種を安定化し,室温程度の比較的高温の条件でも単分散に近い分子量分布のポリマーが得られ るようになった。また,得られた活性種はリビング性を有しているので,重合終了時に第2のモノマーを添加すると,選択的にブロッ クコポリマーが合成できた。その際,ブロックコポリマーの分子量や組成比は,仕込み比等で容易に制御可能である。

添加塩基によるリビングカチオン重合

一方,この重合系では,若干の極性基を有していてもリビング性を失わないという特長が見いだされ た。その結果,下図に示すような種々の性質を有するセグメントのポリマーへの導入が可能になった。例えば,OH基やCOOH基 (重合時には保護機を要する) を有する親水性ポリマー,アルキル基や結晶性を有する疎水性ポリマー,後述する刺激応答性ポリマー(POEVEs),重合官能基やアルデヒド基を有する反 応性ポリマー等である。また,ここには示さないが,目的に応じて様々な構造のポリマー(グラフト,グラジエントコポリマー,星型 ポリマーなど)が合成できることも明らかになった。

リビングカチオン重合で合成可能なポリマー


-関連する報告論文-
総説 (Open Access)

→ 2. 機能性ポリマーの創製に向けた分子設計と精密合成


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