実験室紹介
ようこそ、時間分解分光学とタンパク質科学の世界へ!
水谷研究室には、大小6つの実験室があります。これらの実験室では、おもしろい機能をもったタンパク質を精製し、その構造やダイナミクスをオリジナルな実験装置を使って観測し、タンパク質機能の分子メカニズムを調べています。
独自の技術による研究
可視領域から紫外領域の広い波長範囲にわたって、またピコ秒からサブ秒までの10桁以上に及ぶ幅広い時間流域にわたって、タンパク質の時間分解共鳴ラマンスペクトルを測定できるのは、世界的に見ても私たちの研究室しかありません。これらの技術は、これまでに私たちが行ってきた工夫の積み重ねから培われたものです。水谷研究室では、これら独自の技術を使って、私たちにしかできない研究を展開しています。
時間分解共鳴ラマン分光法
振動スペクトルは、分子構造について豊富な情報を含んでいます。特に、共鳴ラマン分光法は、タンパク質の分子構造を調べる方法として、非常にすぐれた特徴を持っています。それは、ラマンスペクトルを測定するための光の波長を変化させると、波長によってさまざまな部位の構造を選択的に観測できるという点です。また、速い現象を追跡することができるというのも、共鳴ラマン分光法の大きな特徴です。私たちの開発した装置ではピコ秒(1兆分の1秒)の時間刻みで、タンパク質の動きを追うことができます。
時間分解共鳴ラマン測定室(ピコ秒~ナノ秒領域) 理学部本館 B114・B116号室(通称 Picoport)
B114・B116号室には、ピコ秒パルス光を使った時間分解共鳴ラマン分光システムが設置されています。タンパク質には、サブピコ秒からミリ秒にわたり幅広く連続的に重要なダイナミクスが存在します。タンパク質機能の分子メカニズムを明らかにするには、これらのダイナミクスを始めから終わりまで全て観測することが必要です。
私たちは、さまざまな非線形光学技術を利用して、可視領域および紫外領域に波長可変のピコ秒紫外光パルス発生システムを開発しました。また、レーリー散乱光や可視領域の蛍光を効率的に除去するための、プリズム型前置分光器を製作しました。これらの工夫によって、良質の共鳴ラマンスペクトルの時間分解測定が可能になり、タンパク質の示す興味深いダイナミクスが明らかになってきました。
この分光システムを使って、タンパク質に起きるさまざまな速い構造変化やタンパク質内のエネルギー移動を研究しています。
時間分解共鳴ラマン測定室(ナノ秒~サブ秒領域) 理学部本館 B108・B110号室(通称 Nanoport)
B108・B110号室には、時間分解共鳴ラマン分光システムが2台設置されています。 1台はナノ秒からサブミリ秒領域のタンパク質ダイナミクスを観測するためのシステム、もう1台はサブミリ秒からサブ秒までのダイナミクスを観測するためのシステムです。これらの時間領域には、タンパク質内のプロトン移動、タンパク質の四次構造変化、シグナリング・カスケードなど、機能発現に直接関わる重要なダイナミクスが存在します。これらのダイナミクス観測を基に機能発現メカニズムを解明する研究を行っています。
また、生細胞中に含まれる、タンパク質やその関連分子の空間分布を感度よく観測すべく、ラマン分光法と蛍光分光法による生細胞の分光イメージング技術を開発しています。
培養室 理学部本館 c332号室 (詳しい説明)
遺伝子工学技術の発達により、大腸菌を利用して効率的にタンパク質を作ること(タンパク質発現)ができるようになりました。このため、これまでは微量しか生物から単離できないために研究が難しかったタンパク質が、分子科学研究の射程距離内に入ってきました。また最近では、ゲノム解析から、その存在が初めてわかったタンパク質も見つかっています。これら新規なタンパク質が、遺伝子工学的手法を利用することによって、タンパク質分子科学の新しいターゲットになっているのです。
私たちの研究はまず自らの手でタンパク質試料を得るところから始まります。c332号室には、タンパク質の大量発現のための大腸菌培養用機器が整備されています。
分析機器室 理学部本館 B111号室
ここでは、さまざまクロマトグラフィー技術を使って、研究に使用するタンパク質を精製します。得られたタンパク質試料は、電気泳動や吸収スペクトル、蛍光スペクトルを用いて純度や濃度をチェックします。この部屋にはそのためのゲルイメージャー、紫外可視分光光度計(測定可能領域:190-3300 nm)、蛍光光度計が設置されています。
試料準備室 理学部本館 B112号室
試料調製や分光測定のための前処理などをここで行っています。
小型遠心器、クロマトチャンバー、超低温槽、超純水製造装置、真空ライン、pHメーター、化学天秤などが設置されています。