大阪大学大学院理学研究科 附属基礎理学プロジェクト研究センター 原田グループ ロゴ
  English

抗体と抗原の結合による超分子構造の形成

新規抗体超分子 触媒2
バイオセンサー材料 ポルフィリンの科学
触媒1 DNA超分子

バイオセンサー材料

バイオセンサー基板上での超分子形成を利用した微量毒物検出 2002

こではメチルビオロゲンの検出法について述べる。メチルビオロゲンは光化学における電子受容体としてよく用いられている。また除草剤としても用いられていた反面、パーキンソン病をひき起こす物質の一つとしても知られる有害物質である。メチルビオロゲンは電荷を有する低分子化合物であるため、SPR型バイオセンサーで特異的に微量検出することは分子量の点から困難である。また電荷を持つ分子は濃度が濃くなるとセンサー表面に非特異的吸着が起こるため、測定誤差が大きい。このメチルビオロゲンの検出にモノクローナル抗体を用いた。しかし抗メチルビオロゲン抗体を固定したセンサーチップ基板にメチルビオロゲンを添加したが、微量のメチルビオロゲンを検出することは困難であった。これは先に述べたようにメチルビオロゲンそのものの分子量が小さいためにバイオセンサーの応答シグナル強度が小さいことに起因する。メチルビオロゲンを特異的にかつ高感度で検出するためには抗体がメチルビオロゲンに結合したことを大きなシグナルとして取り出す必要がある。この問題を克服するシグナル増幅法の一つが抗体と2価性抗原との超分子形成である。2価性抗原とその抗原に相補的な抗体を等量ずつ混合すると、線状もしくは環状の会合体を形成する。 抗体を固定したセンサーチップに2価性抗原と抗体を順次添加するとSPRの応答シグナル強度は抗原-抗体間の会合体(超分子)の成長とともに増大する。ここで2価性抗原であるビ オロゲンダイマーの代わりにメチルビオロゲンを添加すると、センサーチップ上に固定された超分子の末端にある抗体の結合部位にメチルビオロゲンが結合し、 ビオロゲンダイマ-と抗体の超分子形成ができなくなる。つまりビオロゲンモノマー(メチルビオロゲン)は超分子形成を阻害することになる。この手法においてメチルビオロゲン添加は次のステップの抗体―ビオロゲンダイマー間の超分子成長反応に影響を与える。メチルビオロゲンの分子量257の応答シグナル強 度は分子量15万の抗体の結合阻害挙動に置き換わることになる。
本システムの感度は低分子を抗体固定基板に添加する単純系の140倍になることがわかった。

 

ページのTOPへ