DNA超分子
走査型プローブ顕微鏡で見る超分子構造(2000)
環状DNAの絡み合い分子(DNAカテナン)そのものをAFMで観察した初めての例
環状DNAから調製した「DNAカテナン」 環状DNAモノマー
近年、2個以上の環状化合物が互いに「知恵の輪」のように連結している化合物「カテナン」に多大の関心が寄せられている。これはカテナンが粘弾性に富む 材料や新規刺激応答材料としての機能発現が期待できるからである。カテナンの構成ユニットに生体高分子を用い、それらを人工的に組織化・集積化することができれば、生体高分子の本来の機能に新たな機能を付与することが可能になると期待される。本研究では、高度な情報を担うDNAを超分子構造形成のための材料として注目した。本トピックスでは環状DNAを非共有結合で連結したDNAカテナンの構造観察について述べる。
市販のプラスミドDNA(環 状DNA、pBR322)は溶液中、開環状(弛緩した輪)と閉環状(1分子内でDNA2本鎖同士が巻き付いた構造)DNAに起因する2種類の構造が存在する。電気泳動で分離された2つのバンドからそれぞれDNAを 抽出し、原子間力顕微鏡(AFM)測定を行った。AFM測定はシリコン単結晶の探針を用いて、タッピングモードで大気中室温において行った。その結果、視野内すべてのDNA分子イメージが開環状あるいは閉環状構造になっていることがわかった。これは電気泳動バンドから抽出された溶液中のDNA構造がAFM測定時においても保持されていることを示している。
プラスミドDNAにDNase Iを添加することにより閉環状DNAを開環状構造体に変化させた。ここにトポイソメラーゼIを添加した結果、新たな電気泳動バンドが現れた。このバンドから抽出されたDNAのAFMイメージでは鎖長がDNAモノマーの鎖長(約1.5 μm)の2倍で、かつDNA鎖が絡み合ってカテナン構造を形成していることがわかった。
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